2024年 世界の消費者トレンド
AIに聞け (Ask AI)
生成AIが、世の中を塗り替えようとしている。生成AIを用いたツールやアプリは、ユーザーにとっての共同制作者となり、また、人々の意思決定やブランドとのかかわり方に影響を及ぼし始めている。
「AIに聞け」とは、いわば世界中の人々を巻き込んだ実験であり、消費者が生成AIの更なる進化を期待し続けるトレンドだと言えるだろう。
例えば、ボイスアシスタントとチャットボットを考えてみよう。ボイスアシスタントが提案するパーソナライズされたおススメ情報について、抵抗がないと回答した消費者は40%以上に上った。他方、カスタマーサービス用チャットボットによる、複雑な質問に対する回答内容について満足する、と回答したのは20%に満たなかった。生成AIは、このようなサービスを強化・洗練し、より良いユーザー体験をもたらすことができる。
生成AIは、私たちの日常生活により深く浸透していく。企業は生成AIを活用することで、パーソナライゼーションを推し進め、顧客体験を豊かにしていかなくてはならない。
の消費者が、ボイスアシスタントが自分に最適化された製品の情報や提案をすることについて抵抗がないと回答
出所:ユーロモニターインターナショナル「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:デジタルサーベイ」2023年3~4月実施(n=20,079)
の消費者が、複雑な質問に対して、カスタマーサービス用チャットボットを活用することに抵抗がないと回答
出所:ユーロモニターインターナショナル「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:デジタルサーベイ」2023年3~4月実施(n=20,079)
の業界関係者が、自分の企業が今後5年間、生成AIに投資するだろうと回答
出所:ユーロモニターインターナショナル「ボイス・オブ・ザ・インダストリー:デジタルサーベイ」2023年8~9月実施(n=198)
の消費者が、体験型の店舗で買い物をしたことがあると回答
出所:ユーロモニターインターナショナル「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ライフスタイルサーベイ」2023年1~2月実施(n=40,691)
の消費者が、ブランドが自らの感情を計測し、ユーザー体験をパーソナライズすることに抵抗がないと回答
出所:ユーロモニターインターナショナル「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:デジタルサーベイ」2023年3~4月実施(n=20,079)
一瞬の気晴らし (Delightful Distractions)
消費者は、日々のストレスを忘れる方法を探している。心配事からいっとき離れ、ありふれた日常を打ち破る一瞬を求めている。「一瞬の気晴らし」とは、ポジティブな気持ちを呼び起こす瞬間のことだ。ドキドキ、ニッコリ、ワクワク。こういった瞬間は、ときめきを生み、緊張を解き、心配事を忘れさせてくれる – 短い時間であっても。
小さな驚きや、ちょっとした喜びは、このような欲求を満たしてくれる。消費者は、ポジティブな感情をもたらす商品を探している。また、一時的な現実逃避としてのエンターテインメントも求めている。
こうした幸せを振りまくことのできるブランドは、消費者と強固なつながりを築くことができるのだ。
サステナブル懐疑 (Greenwashed Out)
消費者だけでは、気候危機に対峙することはできない。消費者はサステナブルな生活を意識して行動を変えてきたが、企業や政府が本当に世界を変えるために、やれることをすべてやっているのか、疑問に感じている。
環境問題への関心は高い。2023年には60%以上の消費者が、環境に良い変化を与えようと行動した。しかし人々は、個人が地球を守るためにできることには限りがあることにも気づいている。これからも、できる範囲でサステナブルな選択をとり続ける消費者がいる一方で、意味を感じられずに今までのような努力をしない消費者も出てくるだろう。
「サステナブル懐疑」な人々は、企業や政府といった組織が立ち上がり、自分たちが立てた目標の達成に取り組む姿勢を見せてほしいと考えている。今日、地球環境について、より大きな責任が問われているのは、企業や政府だ。環境への取り組みを強化するだけでなく、企業そして政府の決定が、いかに直接的かつポジティブな変化をもたらしているかを、消費者に対して明確に示す必要がある。
の消費者が、日々の生活の中で環境に良い変化を与えようとしたと回答
出所:ユーロモニターインターナショナル「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:サステナビリティサーベイ」2023年1~2月実施(n=40,691)
の業界関係者が、今後5年以内に自分の企業がグリーンウォッシュを避けるための認証を取得すべく投資を計画していると回答
出所:ユーロモニターインターナショナル「ボイス・オブ・ザ・インダストリー:サステナビリティサーベイ」2023年2月実施(n=713)
の消費者が、向こう5年間、自国が政治的に落ち着くことはないだろうと回答
出所:ユーロモニターインターナショナル「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ライフスタイルサーベイ」2023年1~2月実施(n=40,691)
の消費者が、政治的・社会的な問題に対して積極的に関わっていると回答
出所:ユーロモニターインターナショナル「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ライフスタイルサーベイ」2023年1~2月実施(n=40,691)
広がる分断 (Progressively Polarised)
社会的・政治的な問題は、世界中で議論を起こし続けている。1/3以上の消費者が、少なくとも向こう数年間は、自国が政治的に落ち着くことはないだろうと回答した。2024年、米国を初めとする世界の主要国のいくつかで大型選挙が予定されており、世界の緊張がさらに高まるだろう。
今日、消費者は明らかに「広がる分断」化しているが、それは彼らの行動に必ずしも反映されるわけではない。社会的・政治的な主張を掲げるブランドに対する消費者の反応は、予測が難しい。
自分と同様の信念を持つブランドを支持し続ける消費者がいる一方で、特定の商品を購入するにあたり、社会的・政治的な主張との関連を気にしない消費者もいる。はたまた、そのような主張を行うブランドは全て避ける、という消費者もいる。
いずれにせよ、センシティブなトピックに触れるマーケティングキャンペーンに対して、消費者は素早く反応する。そして、搾取構造が見えるときは特にそうだ。企業が感情的なトピックに接する際は、自社の信念を貫きながらも、十分に注意を払う必要があるだろう。
クリエイティブな倹約家 (Value Hackers)
インフレが、新たな経済的価値観を消費者の心に植え付けた。2023年、物価高騰によって、消費者は家計のコントロールに苦労した。消費者の実に4人に3人が、日用品の値上げが心配だと回答している。人々は、家計に大ナタを振るうことを余儀なくされ、生活費の上昇に対応するため、切り詰める消費者にならざるを得なかった。
インフレが減速してもその爪痕は深く、消費者の購買力には影響が残る。彼らは節約を優先しつつも、うまくやりくりする方法を模索している。
「クリエイティブな倹約家」は質に妥協することなく、出費を切り詰める消費者のことである。彼らは創意工夫に余念がない。安価な代替品の探索に労を惜しまず、クレジットカードやロイヤリティポイントを活用し、プライベートレーベル製品に乗り換え、金のかからない娯楽を楽しんでいる。消費者は、限りある収入の中で、工夫しながら家計のやりくりの仕方や、ライフスタイルを刷新しているのだ。
企業は、インセンティブを向上させ、お得感をもたらす新しいアイディアを創出するなど、価格に敏感な消費者に応えることが肝要だ。
の消費者が、日用品の値上げが心配だと回答
出所:ユーロモニターインターナショナル「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ライフスタイルサーベイ」2023年1~2月実施(n=40,691)
の消費者が、これまで以上に節約をするつもりだと回答
出所:ユーロモニターインターナショナル「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ライフスタイルサーベイ」2023年1~2月実施(n=40,691)
の消費者が、効果が保証されている美容商品にはもっと出費するつもりだと回答
出所:ユーロモニターインターナショナル「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ビューティーサーベイ」2023年6~7月実施(n=20,060)
お手軽ウェルネス (Wellness Pragmatists)
消費者は、セルフケアに関して程々なアプローチを取り始めている。彼らは時間や苦労を大して要さず、普段の日常に溶け込むような、簡単かつ効果的なやり方を好む。「お手軽ウェルネス」な消費者とは、手軽に、そしてすぐに健康を手にしたい人々のことだ。
心身の健康に対して、無理のない目標を設定するのも特徴だ。一晩で大きな変化を起こそうとは考えておらず、少しずつであっても目に見える変化を期待している。
科学や技術の進歩に伴い、健康や美容業界ではイノベーションが生まれ続けている。消費者は、結果を求めて、まったく新しいソリューションも選択肢に入れている。
心身をより健康にしたいという消費者の思いは強い。企業は使いやすく、健康効果が高い、質の高い商品を提供し、彼らの需要に応えるべきである。